van der Waerden の『現代代数学』を全然読めてない件について

学力不足を恥じたり読めないといって自分を責めるのは若い人のやることです。もう若くないので鉄面皮に周辺事情とかどうでもいい話を書きます。

Preparing English version. (2010/09/13)

I can't go on reading van der Waerden's Modern Algebra. People over thirty-five, like me, should not talk about inevitable lack of enough motivation and keep the priviledge of such self-consciousness for the younger. Only some trivial remarks I do.
なんか計算機科学とか、Haskell、ML界隈の人って圏論とか使いますよね。矢印が出てきてモノイドがどうとか。

Often I hear CS/Haskell/ML guys talk about category theory. They talk about arrows, monoids, universality, etc. Even groups and commutative algebra are greek to me. It's very long way to categories and universalities.

私は圏論とか普遍代数以前に群論可換環論が全くわからないので、数論の奇人、加藤和也が航空工学から数学に転向したときに取り憑かれたように読んでいたという伝説の書、『現代代数学』[1]を Amazon.co.uk で注文し、4月14日あたりに届いたのですが、3次元の回転群は可換でない、という説明でひっかかって先へ進めていません(2次元の回転群は、時計の針を考えればすぐわかるように可換です)。

Kazuya Kato, a Japanese number theorist, learned algebra from van der Waerden's Modern Algebra[1] when he converted from aeronautics. So I do, and I can't grasp the reason why SO(3) is not commutative - It's easy to realize that SO(2) is commutative. Just imagine wall clock.

そもそも線形代数の知識が高校時代の代数・幾何(旧課程です。2010年現在の数学B、数学C相当)で止まっていたのを忘れてました。ちなみにこの本は線形代数の知識があることをはなっから前提としていて、線形独立性/線形従属性/基底について書いてあるページ数はドイツ語の初版でたった4ページ、自分の持ってる英語版(ドイツ語第2版の英訳)でも足かけ6ページです。うわー。

自由に回転できる地球儀が欲しいです。。。つうかもっと前から出直さないとだめだ。。。

This book assumes linear algebra as prerequisite, and spend only 6 pages for linear (in)dependence and base. All I know about linear algebra is multiplication of 2 x 2 matrix. It's time to go back to high scool, and study an easier textbook.

ソーンダース・マックレーンは圏論の提唱者で、圏論の基本的な教科書である『圏論への30講』、じゃなかった、『圏論の基礎』の著者として知られています。かれは1930年代にゲッチンゲンで数学を学んだアメリカ人なので、ダフィート・ヒルベルトおよびヒルベルト学派のエミー・ネーター、エミール・アルティン(『ガロア理論入門』『ガンマ関数入門』)、それにこの本『現代代数学』の著者であるオランダの数学者、バルテル・レーンデルト・ファン・デル・ヴェルデン(ラムゼイ理論の定理に名を残してます)らによって抽象代数学(まあほぼ可換環論、つまり代数多項式の一般理論です)が建設された当時の事情を詳しく知っています。

マックレーンの Notices of the AMS の記事[2]をてきとうに要約しつつ自分のあやふやな理解を晒し、勉強方針を反省してみます。

A Saunders MacLane's review appears on Notices of the AMS. We will follow this article[2] and get some perspective on development of commutative algebra. MacLane is known as one of the inventors and the author of basic textbook of category theory. He studied at Gottingen in 1930s, so does know directly the research held these days among Hilbert-Noether school.

ファン・デル・ヴェルデン(長いですがこれが姓なので)は代数幾何の研究者です。

かれはある種の単純な(←ここはきっと死ぬほど重要)代数多様体(曲線とか曲面とか超平面とか、n次元空間の中のn元多項式で書ける図形、だと思う)の交点の個数について成り立つ性質(全く理解してないので「ベズーの定理」とかでぐぐってください、高々?両方の図形を示す多項式の最高?次数の積になる?とか、そんな感じの)を、たぶん拡張して、複雑な代数多様体について調べてたっぽいんですが。

Van der Waerden's research interest was algebraic geometry. an algebraic variation, the object of algebraic geometry, is represented as a set of zeros of polynomial.

Bezout's theorem asserts relation between intersection of two algebraic curves and the product value of degrees of those representing polynomials. Ideal theory of rings, what Noether was investigating, is "factorization" theory of polynomials, and an important tool for decomposing algebraic variations.

ネーターが研究してた可換環イデアル論は多項式を「素因数分解」した整式でもとの環の小型版とかを作る話なので(たぶん)、まあなんか多項式の最高次数とは密接に関係しそうですよね。これが使えそうだというのでファン・デル・ヴェルデンは、ネーターのいたゲッチンゲンやらネーターの弟子のアルティンのいたハンブルグやらで聴いたり講じたりしたあげく、「ネーターとアルティンの講義を元にした」(と書いてある)現代代数学の教科書を書き上げました。ちなみに書名の「現代」という prefix はドイツ語第4版で取れてます。ようするにこの本の抽象代数学がそれだけ一般化したわけです。

マックレーンはこの本が代数の世界を変え、その後の代数幾何の進歩の基盤になったのだ、と書いてます。代数幾何ですか。。。難しそうすぎる。。。

ちなみにバーコフの束論とそれに続く順序理論の整備はこの後の話になる、はず。そしてマックレーンとバーコフはファン・デル・ヴェルデンを踏まえた新しい代数の教科書を英語で書き下ろしてます。

よく計算機科学の教科書とかの前書きのあたりにある、章毎の前提知識の依存関係のダイアグラム(1-4章までは読まないと5章、6章、7章の内容がわからないけど、5章、6章、7章の内容は互いに独立です、とか)はファン・デル・ヴェルデンが元祖です。

群、環、多項式ガロア理論(どうもたんなる5次方程式の代数的不可解性の証明ではなく、多項式の理論の集大成ということらしい)、実閉体(弱い、決定可能な、解析学の理論)、付値(なんかブール代数と関係するらしいという噂)とかそういうのが1巻の内容です。[追記:現行の版だと実閉体と付値の章がなくて、かわりにベクトル空間とテンソルの章とツォルンの補題の章がある模様]

2巻の内容は生きてるうちに手を出せる気がしないので買ってないので知りません。以上。世の中わからないことだらけだ。。。

References:

[1] B. L. van der Waerden, Modern Algebra, vol.1, Unger, 1949

[2] Saunders MacLane, "van der Waerden's Modern Algebra", Notices of the AMS, March 1997

[3] Fernando Gouvea, "How Algebra Became 'Modern'", 2010 JMM Great Books Short Course, HOMSIGMAA website, http://web.archive.org/web/20110102155237/http://www.homsigmaa.org/sc-fg.pdf , downloaded on 30 May 2010

一松信, 『新しい数学 代数系入門』, 日本評論社, 1964

蔵野和彦, 「Intersection multiplicity の代数的な記述について」, http://www2.kobe-u.ac.jp/~mhsaito/agsymkobe07/proceedings/kurano.pdf , downloaded on 30 May 2010