今年買ったし開いたけど読んだとはいえない本

久保田富雄『数論論説―メタプレクティック理論と幾何学的相互法則』

数論論説―メタプレクティック理論と幾何学的相互法則
束論、調和解析整数論の関係について様子を知りたくて買った。amazonの「キモおやぢ」氏のレビューに引きずられて買ったのだが内容は理解できない。Gaussの文章についての数学史的叙述に引き込まれるものがあった。

外村彰『ゲージ場を見る―電子波が拓くミクロの世界』

ゲージ場を見る―電子波が拓くミクロの世界 (ブルーバックス)
場の理論というのがどういうものか様子を知りたくて買った。今の高い集積度の集積回路の配線をシリコンの上に描くには紫外線では描けないほど細い線を描く必要があり、それには電子線を使うが、外村は日立の技術者でその研究をしていた。電子線はミクロの世界の電磁気学の様子を知る手段としても使える。磁力線とか電気力線のようなカップリングを示す「力線」というものがあるが、これは単なる図上の存在ではなく、ミクロの世界では量子化されたエネルギーの束(Bundle)として実際に見ることができると初めて知った(物質を結びつける「編み目」をつくる「糸」の役割を果たす)。楊振寧(Yang-MillsのYang)は外村チームの仕事を高く評価していて、恋ケ窪にある日立の総合研究所まで外村チームを激励に来たそうだ。

浦川肇『変分法と調和写像

変分法と調和写像
阪大総合図書館の学習用図書の棚に何冊か入っている本。英訳(asin:0821845810)も出ている。
買ってからまだ最初の10ページ程度しか眺めていないのだが、それだけでも買う価値があると思う。少なくとも自分は物の見方が変わったし、調和関数論やポテンシャル論の重要性を認識したし、京都賞のEdward Witten講演に行く気が失せた(この本に書いてある程度のことは完全に理解していなければ話の内容が判るわけがない)。世の中に溢れる高等物理系のPop Science本の解毒になると思う。

池尾愛子『日本の経済学―20世紀における国際化の歴史』

日本の経済学―20世紀における国際化の歴史
日本の経済学史(経済学者学ではない、ただ若干その嫌いはある)の水準を示す本。素人なりに経済学説史を調べていて鵜呑みにしていた話がいくつも否定されていて衝撃的だった。著者はこの本で示された研究内容を米Duke大学を中心とするHistory of Political Economy誌界隈の経済学史コミュニティでも精力的に紹介しており、英語版(asin:041563427X)も今年になって出たようだ。各論説の下敷きになっているのは日本の経済学関係者に著者がインタビューを行って得たオーラルヒストリーであり、その口述内容もどこかで見てみたいものだと思う。