人間は草食動物たりうるか?

追記:オーガニック死霊のはらわた
この小説読んだのに忘れてた…

性行動と食性の可塑性

ヒトの性行動には可塑性があることが知られている。男性同性愛者は全人口の5%を占めるといわれる(これは遺伝的要因も強いらしい)。人口の伸びの止まった豊かな国ではこの可塑性は文化的に抑圧されず、政治的に配慮が進み、また性行動や文化的なジェンダーの多型化傾向が強まるように見える(ここではこの件を追究しない)。性行動の可塑性のひとつとして、性行動の減退、というものがあり、男性の「草食化」などと日本語では俗称される。
いっぽうでヒトの食性は基本的には雑食(動物性と植物性の食物を摂取する必要がある)とされているが、大豆など、不足するアミノ酸を補うことで菜食で生きることは可能ではある。カロリーを穀物に多く依存する東アジア人の腸は欧米人のそれに比べ長い傾向があるとされる。
ヒトを文字通り「草食化」させる方法について考えてみたい。

ヒトと細菌の共生と、ウシと細菌の共生の違い

ヒトの腸に共生する微生物群(腸内細菌叢)は近年のヒト医学・生理学において活発に研究されているトピックである。腸の自己免疫疾患を糞便移植によって治療できる、という報告は多くの注目をあつめた。
食品業界でいわば「工業的に生産できる食物繊維」として脚光を浴びている、難消化性デキストリンという物質がある。これはデンプンを加水分解する際に僅かに生じる、分枝をもつ多糖類であって、胃で分解できないが、腸に到達するとそこで代謝され、腸内細菌叢の栄養源として利用される。
腸内細菌叢による難消化性デキストリン代謝のメカニズムは、ウシの第一胃(ルーメン)に共生する微生物群によるセルロース代謝のメカニズムと類似している。では、ウシのルーメンの中身ないしそれに似たものをヒトの腸に共生させたら、ヒトは草食性になりうるだろうか?

腸と脳と人格

ヒトの腸のクロム親和性細胞は脳神経同様にセロトニンを生産することが知られており、腸内の単糖類の濃度が上昇した場合、これらの細胞の活動に影響を与える可能性がある。そもそもクロム親和性細胞は獲得免疫機構との関連が指摘されていて、むしろヒトの脳自体が免疫機構の高度化のいわば副産物として知能を獲得した可能性すらある。
腸の内容物をコントロールすることで我々は高次脳機能を間接的にコントロールできる見込みが高いし、将来的には「人格」というものの独自性は次第に失われると考えられる。